今回の質疑のポイント
- Q1 令和6年の 訪問介護の報酬引き下げで都内訪問介護事業者の影響は❓
- 令和6年度に都が指定を行っている訪問介護事業所における休止は45件、廃止が191件。
- ⇨地域の介護を支える人材が静かに、しかし着実に減ったことがわかります
- Q2 訪問介護の報酬が下げられた要因に対する都の見解は❓
- A2 都は国に対し事業者が安定的に行うことができる報酬を要求
- A2 併設事業所の状況等のサービス提供の実態を精緻に分析し、必要な対応を求める
- ⇨⇨都も、サ高住の実態も含めた現場の実態把握を国に求めていることが分かります
- Q4 令和5年と令和6年の処遇改善加算の取得状況は❓
- A4 令和5年 87.6% 令和6年 87.7%
- ⇨⇨わずか0.1%しか新たに取得できていません。
- ⇨⇨国の「処遇改善加算を含めれば報酬全体が上がる」という見通しは、誤りです
質疑の全体は以下です。

2024年度の介護報酬改定により、訪問介護の基本報酬は引き下げられました。この改定は在宅介護の崩壊につながるという指摘がある通り、大変問題だと考えています。
令和7年厚労省の「介護人材確保に向けた処遇改善等の課題」によると「事業を運営する上での課題として「人材の確保・定着のために十分な賃金を払えない・賃上げができない」、「良質な人材の確保が難しい」をあげている事業所が多いとしています。
深刻な人手不足、担い手不足に直面しながらも、高齢者の生活を支える介護の現場が持続可能で、働く人が誇りをもてる処遇に変えていかなければいけません。
訪問介護の報酬引き下げの影響について伺います。
Q1 令和6年度における都内訪問介護事業者の休廃業件数を伺います。

令和6年度に都が指定を行っている訪問介護事業所における休止は45件、廃止が191件です。

「地域の介護を支える人材が静かに、しかし着実に減り、事業継続の限界に直面している」という現実が、数字として明確に表れていることがわかりました。

厚生労働省の調査によれば、訪問介護の利益率は令和4年で7.8%と、比較的高い水準を示し、国は「訪問介護は黒字」という判断を招いたという指摘が複数の報道があります。
しかしこれは、サービス付き高齢者向け住宅、いわゆる「サ高住」などの移動が少なく効率的な運営ができる事業所により利益率が押し上げられた結果と言われています。
結果的に地域を1軒1軒回っている中小の事業所の苦しい経営実態との大きな乖離が起こりました。
令和6年度報酬改定において、訪問介護の報酬が下げられた要因に対する都の見解を伺います。

国は、介護事業経営実態調査によりサービス類型ごとの収支差率を把握し、介護事業所の経営状況を十分踏まえながら、社会保障審議会の意見を聞いた上で報酬改定を実施していると説明しています。
都は国に対して、事業者が事業運営を安定的に行うことができる報酬とするよう提案要求しており、訪問介護については、基本報酬の減の影響等について、併設事業所の状況等のサービス提供の実態を精緻に分析したうえで、必要な対応を行うよう求めています。

「併設事業所、つまりサ高住などに関しての状況等のサービス提供の実態を精緻に分析した上で必要な対応を求める」という大切な要求をしていることがわかりました。引き続き、訪問介護の現場を守るため、しっかりと国に対し意見をしていただきたいと考えます。
そこで、都内サービス付き高齢者向け住宅における訪問介護事業所の併設状況を伺います。

令和6年度サービス付き高齢者向け住宅実態調査によると、回答のあった370か所のうち、訪問介護事業所を併設している住宅は155か所です。

約4割が介護サービスを併設で提供していることがわかりました。
サ高住内でサービスが完結することにより、地域のケアネットワークとの連携、医療介護サービスとの連携などに課題があると言われており、注意が必要です。

国は報酬引き下げの影響を補う施策として、処遇改善加算の拡充を位置づけています。
しかし、市内の事業者は「すでに頑張って処遇改善に取り組んできており、すでに上位の加算をとっている事業所は減収になるだけだ」と窮状を訴えています。
都内訪問介護事業所における令和5年度と令和6年度の処遇改善加算の取得状況を伺います。

処遇改善加算については令和6年度に加算率の上乗せが行われており、都が指定を行っている訪問介護事業所では令和5年度末で87.6%、令和6年度末で87.7%の事業所が取得しています。

令和5年度と令和6年度を比較して、処遇改善加算を新たに取得できたのは、わずか0.1%だということがわかりました。
これで、国が言うように本当に現場の処遇は改善しているのでしょうか。
小規模事業者にとっては取得が難しいこともある上に、事務負担の重さも指摘される中、「処遇改善加算を含めれば報酬全体が上がる」という国の見通しは、またも現場と乖離しており、深刻な問題だと考えます。

また、毎月のサービス担当者会議においても居宅介護支援事業所におけるDXが進んでおらず、たくさんの紙を扱っている姿を見て、大変そうだと感じます。国は、ケアプランデータ連携システムの普及を進めているが、介護事業所における導入率を伺います。

国によると、全国の「ケアプランデータ連携システム」対象事業所における令和7年1月末時点での導入率は6.7%で、都は7.7%でした。
なお、都はケアプランデータ連携システムの更なる普及に向け、今年度から区市町村に対する補助事業を開始しています。

都で7.7%とまだまだ低い水準であることがわかりました。
実際は紙やFAXでのやり取りも多く、現場のメリットもまだ見えにくいようです。文書作成の現場負担をなるべく減らすことができるよう、一層の支援をお願いします。

令和6年度における居住支援特別手当の実績と評価を伺います。

都は、介護職員等の処遇改善に向け、国が介護報酬等の必要な見直しを講じるまでの間、介護職員等を対象に居住支援特別手当を支給する事業者を支援しており、令和6年度は、約1万5千事業所の約8割が申請し、多くの事業所に活用いただきました。

都の迅速な対応力と独自性を示す好事例となりました。現場からは好意的な反応が多く寄せられており、高く評価します。
次に、令和6年度における介護人材対策に係る新規事業のうち、介護DX推進人材育成支援事業、介護現場のイメージアップ戦略事業及び地域を支える訪問介護応援事業の実績を伺います。

◯介護事業所でDXの推進に取り組むリーダー人材の育成を支援する介護DX推進人材育成支援事業は、152法人に補助を行いました。
◯介護現場のイメージアップ戦略事業においては、9法人13事業所を介護の仕事と夢や趣味を両立できる環境づくりに取り組む介護WITH事業所として選定し、介護事業者向けセミナーで職場環境の整備方法や具体的な事例の紹介を行うなど、協働でPRを行っています。
〇訪問介護事業所での雇用確保と働きながらの資格取得を支援する、地域を支える「訪問介護」応援事業では、824事業所(277法人)が本事業に参加し、233人が就業しました。

今回の訪問介護の報酬引き下げは、在宅介護の崩壊につながるだけではなく、現場で支える介護職に対して、士気を下げる、極めて誤ったメッセージを放ったことも深刻な問題です。
介護は、数字では測れない、人の尊厳を守る仕事です。雇用と、働く人の誇りを守ること、持続可能に介護にたずさわる人を支えていくこと。
そのメッセージを、都が先頭に立って一層発信していただきたいと思います。

